松崎町には、ここでしかつくれない柑橘があります。
「栄久ぽんかん」です。
濃厚な甘みと、皮をむいた瞬間に広がる強い香り。一般的なぽんかんよりも旬が遅く、1月後半から2月にかけて収穫されることで、太陽の光をたっぷり浴びて育ちます。市場に多くは出回らず、知る人ぞ知る存在。その希少性もまた、この柑橘の大きな特徴です。
なぜ、この柑橘は松崎でしかつくれないのでしょうか。
台湾から持ち込まれた柑橘
栄久ぽんかんのはじまりは、昭和9年。三余農園の2代目・土屋栄久氏が、台湾からぽんかんを持ち帰ったことがきっかけでした。当時、各地で柑橘栽培が広がる中、この柑橘は松崎町という土地に根付き、受け継がれていきます。
現在、その栽培を担っているのが、三余農園五代目の土屋人さんです。

この土地だから生まれる味
伊豆半島南西部に位置する松崎町は、温暖な気候と水はけの良い土壌に恵まれています。柑橘栽培に適したこの環境が、長い年月をかけて品質を育ててきました。
栄久ぽんかんは、収穫時期をあえて遅らせることで、甘みと香りを最大限に引き出しています。強い日差しを受けながらゆっくりと成熟することで、他の柑橘にはない濃厚な味わいが生まれます。
一方で、栽培が困難なため、町内でも限られた生産者だけが受け継いでいます。

受け継ぎながら、挑み続ける
三余農園の歴史は、明治36年から続いています。120年以上にわたり、柑橘づくりが受け継がれてきました。土屋さんが大切にしている言葉があります。
「挑む農、守る農、つなぐ農。」
受け継いできたものを守りながらも、新しい価値を生み出していく。その両方を実現することが、今の農業には必要だと考えています。
実際に、三余農園では接ぎ木による苗木づくりや、品種改良にも取り組んでいます。種なしや早生化など、新たな品種づくりや品質向上を目指し、現在は40種類以上の柑橘を育てています。

松崎町にしかない価値
この柑橘は、ただ美味しいだけではありません。
どうつくられ、どう受け継がれてきたのか。そのすべてを含めて、「ここでしかつくれない価値」になっています。
土屋さんは、こう話します。
「松崎町という小さな町で、代々受け継がれてきた土地や柑橘への想い、技術を、次の世代へつないでいきたいと思っています。」
柑橘を通して、この土地の魅力を届ける。その積み重ねが、これからの松崎町の価値になっていきます。




